美人局で50万円を恐喝容疑 愛知の裁判所書記官ら逮捕
岐阜県警が令和2年2月3日、名古屋簡裁の職員ら男女2人を恐喝の疑いで逮捕したとの発表がありました(男性が名古屋簡裁の職員であり、女性は自営業者とのこと)。
被疑事実は、知人の男性を飲食店に呼び寄せて「彼女が無理やり襲われたと言っている。警察に連れて行くぞ、嫌なら金を払え。家族にばらすぞ、子どもに会えなくなるぞ」などと脅し、現金50万円を払わせたというものです。
弁護士がニュースを解説します
目次
弁護士の見解
弁護士 若井 亮
弊所でもご相談を受ける件数が多い類型の一つです。
以前は、男性が女性と関係を持った後に、女性の恋人や配偶者を名乗る男が慰謝料や口止め料の名目で金銭請求をしてくるというケースでした。
最近では多少パターンが増えてきて、女性が本当は18歳未満であったとして、親族を名乗る男が示談金を請求してくるというケースもありました。
いずれにせよ、こちらの弱みにつけこんでお金を請求する不当な要求であることには変わりません。
『示談金請求型』の場合
こういったトラブルでは、発覚が遅れる傾向にあります。
自分の弱みを知られたくないため、誰にも相談できずにいるということが原因の一つです。
特に、最近起きている「示談金請求型」の場合には、自分の行為がもしかしたら犯罪に該当するのではないかと強く不安に感じられて、一人で抱えてしまい、発覚が遅れるという傾向にあります。
美人局の対処方法について
もちろん、間違っておりません。
警察に相談すれば、適切な指示を受けることができますから、被害の発生や拡大を防ぐことができるでしょう。
ですが、先ほども触れたとおり、自分の行為が「犯罪に該当するかもしれない」という不安があると、なかなか「警察には相談できない」という方もいらっしゃいます。
実際、出会い系サイトなどでの援助交際をきっかけとして美人局の被害に遭われた方や既婚者の方などに、特にその傾向が強くあります。
また、証拠がなければ警察は対応できず「何かあったら来てください」と帰されてしまうこともございます。
そうなると、いつ相手方から連絡が来るのか分からないまま、不安な状態が続いてしまいますね。
美人局の加害者は、こちらの名前や住所、職場などの情報をうまく収集して、脅しの際に利用します。
こちらとしては、自宅や職場などにいつ相手方から攻撃を受けるか分からない不安を抱えなければならない訳です。
これでは解決とは言えません。
当然、応じる必要はありません。
相手方に請求の根拠を出してもらい、こちらに義務がないと考えられるならば放っておけば足ります。
法的にはそこまで複雑な対応は必要ない訳です。
とすれば、自分で対応すればいいのではないか、そうお考えになるかもしれません。
美人局の相手方は、皆さんが警察や弁護士に相談せず、一人で不安や悩みを抱えて判断力を失うことを狙っています。
判断力を失った後に、じっくりお金を搾り取るのです。
相手方はこちらが法的に反論しても、ありとあらゆる揺さぶりをかけながら、請求に応じなければ酷い目に遭うことを示唆しながら、こちらがギブアップするのを待ちます。
直接の接点を持っている以上は、相手方の揺さぶり行為に晒され続けます。
多くのケースで見てまいりましたが、自分の力だけで不当な要求をはねのけることができる方はそう多くないという印象です。
弁護士は常に皆さんの味方です。
仮に美人局の被害に遭われたきっかけが犯罪に該当すると思われるような状況であったとしても、可能な限り事実の把握に努めます。
そのうえで、刑事事件とならないよう、また刑事事件になったとしても不当に重たい責任を負わないようにするため、全力で活動します。
証拠がなくとも、皆さんの話を信じて戦います。
必要に応じて証拠の作成も行います。
お金を渡したり、怪我をしたり、何かあってからでは遅いです。
そして、ご依頼いただいた後は全て弁護士が代理人として対応することになります。
皆さんが直接の対応をすることはありません。
基本的には普段とおりの生活に戻っていただきます。
そのうえで、弁護士からの報告を受けて、冷静に進め方を決定していくことができます。
今回の解説のまとめ
美人局の被害に遭われ、弊所にご相談いただいた方からは「こういう依頼を弁護士にできるとは思わなかった」とよく伺います。
恐喝や脅迫というと、やはり警察による対応を思い浮かべるのでしょうね。
ですが、既に触れたとおり、残念ながら警察による対応力には限界があります。
皆さんが思うとおりに動いてくれるわけではないのです。
そうしている間に、不当な要求はエスカレートしていきます。
弁護士法人若井綜合法律事務所