暴力団による脅し、恐喝!暴対法と事例を基に対応策の解説

  暴対法が施行されてから30年が経ち、一時に比べて暴力団の数も大幅に減少してきました。そんな中でも弊所には「ヤクザに脅されている。」「暴力団のような相手からお金を請求されている」と言った相談を未だいただいております。
この記事では、実際にあったご相談とその対応をもとに、被害に遭った際にどのように対応すればいいかを暴対法の説明とともに解説いたします。
「暴対法って聞いたことがあるけど、具体的にはよくわからない。」「暴対法があるのになぜ被害に遭うのか」そんな疑問をお持ちの方に、一読いただければ幸いです。

暴対法ってどんな法律?

暴対法は、正式には「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」といい、平成3年5月15日に施行されました。この法律は暴力団員の行う暴力的要求行為等を規制し、市民生活の安全の確保を目的としております。
これにより指定暴力団員や、準構成員等の指定暴力団と一定の関係にある者についての行動が規制されることとなります。暴対法が施行される30年前には、9万人近くいた暴力団の構成員も、現在では2万500人ほどに減っており、極力一般の方が暴力団とかかわりなく安全に過ごせるようになっております。

指定暴力団ってなに?

指定暴力団は以下の3つの要件を満たした暴力団に対して、各都道府県の公安委員会が指定します。

要件
1,暴力団の威力をもって資金を稼ぐこと
2,組員に犯罪歴のあるものが一定の割合以上いること
3,暴力団の代表の下に階層的に構成されている団体であること

指定暴力団にはどんなところがあるの?

現在25の暴力団が指定暴力団として登録されており、六代目山口組が4000人規模で最大となり、次いで住吉会稲川会池田組神戸山口組が、2500人前後の大きな暴力団となっています。
都道府県別にみると福岡県5団体東京都4団体兵庫県3団体と、ニュースでもよく取り上げられている福岡が最多で多数の暴力団があることがわります。

暴力団が登録されている都道府県を赤く示した日本地図

※指定暴力団がいる都道府県

暴対法で規制されている27の行動

指定暴力団は、一般市民の被害の防止などのために、暴対法9条により27の行為が禁止されております。指定暴力団がこの行為に違反した場合、行政から中止命令が発せられそれでも止まらなければ刑罰の対象となります。
この27の行為中でも前半に上がっているようなものは、暴力団の恐喝や、いわゆるみかじめ料、地上げ、闇金の債権回収など、一般の方でも被害に遭う可能性があるものであり、そのような行為を特に規制しております。

1. 口止め料を要求する行為
2. 寄付金や賛助金等を要求する行為
3. 下請参入等を要求する行為
4. 「みかじめ料」を要求する行為
5. 用心棒代等を要求する行為
6. 利息制限法に違反する高金利の債権を取り立てる行為
7. 不当な方法で債権を取り立てる行為
8. 借金の免除や借金返済の猶予を要求する行為
9. 貸付け及び手形の割引を不当に要求する行為
10. 信用取引を不当に要求する行為
11. 株式の買取り等を不当に要求する行為
12. 預貯金の受入れを不当に要求する行為
13. 地上げをする行為
14. 土地・家屋の明渡し料等を不当に要求する行為
15. 宅建業者に対して不動産取引に関する不当な要求をする行為
16. 宅建業者以外の者に対して不動産取引に関する不当な要求をする行為
17. 建設業者に対して建設工事を不当に要求する行為
18. 集会施設の利用を不当に要求する行為
19. 交通事故等の示談に介入し、金品等を要求する行為
20. 商品の欠陥等を口実に損害賠償等を要求する行為
21. 役所に対して自己に有利な行政処分を要求する行為
22. 役所に対して他人に不利な行政処分を要求する行為
23. 国等に対して自己を公共工事等の入札に参加させることを要求する行為
24. 国等に対して他人を公共工事等の入札に参加させないことを要求する行為
25. 人に対して公共工事等の入札に参加しないこと又は一定の価格で入札することを要求する行為
26. 国等に対して自己を公共工事等の契約の相手方とすること又は他人を相手方としないことを要求する行為
27. 国等に対して公共工事等の契約の相手方に対する指導等を要求する行為

暴力団でなくても該当しうる?

暴対法は、暴力団に対してだけではなく一般の人が暴力団に依頼することを禁止しております。例えばお金を貸している相手がいつまでもお金を返さないのでヤクザに貸金の回収を依頼したり、気に食わない相手を脅してくれとヤクザに頼ったりなどがこの条項に該当いたします。
これに違反すると3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処せられる可能性がございます。刑罰を受けることももちろんですが、依頼した事案が解決してもその後に、相談した本人がヤクザにたかられるなど、逆に被害に遭うことも十分に考えられますので、どんなに困ったことがあってもヤクザに頼ることのないようにしてください。

 

 

被害に遭われている方へ解決に向けて

さて、ここからが本題ですが、冒頭でお伝えした通り、ヤクザから恐喝の被害に遭われた方や、ヤクザとのトラブルになった方から弊所にご相談をいただいております。そういったトラブルに対してどのように対応をしていくことが解決につながるのか、実際弊所で対応した事例とともにご説明させていただきます。

暴力団恐喝事例とその対応

対応と書かれた画像

依頼者は友人の紹介で相手方と知り合いました。当初は暴力団関係者であると知らず、名刺などを見たこともなかったのですが、相手方が事あるごとに、刺青を見せてきたり、組織の話をしてきたりしたことから、暴力団関係者なのではないかと疑うようになりました

最初はお金のやり取りなどはなかったのですが、相手方を紹介してきた友人が相手方より借金をしていたにも関わらず逃げてしまったことで、相手方が依頼者に対して立て替えを要求し、断り切れずこれに応じてしまいました。
それからは、利息などあらゆる名目で金銭の支払を要求され、3年ほどの間に総額2000万円近くの金銭を支払ってしまいました。

相手方の要求はエスカレートし続け、金銭の支払に限界を感じた依頼者は弊所に相談に来られました。

依頼者は自宅や実家を知られており、実際に相手方が取り立てに来ていたこともあるなど、緊急対応を要する事案であったため、即時に介入するととなり、弊所弁護士が、所轄の組織犯罪対策課の被害相談へ同行いたしました。

相手方の手口は巧妙で、全てのやり取りは口頭で行われており、脅迫行為や金銭の流れを裏付ける証拠がありませんでした。
そのため、警察は、事件としての立件は難しいかもしれないと判断をしていたのですが、事案の緊急性に鑑み、依頼者及びご家族の保護の対策を講じるとともに、中止命令を出すことでまずは関係を遮断することを提案いただきました。

警察の説明では、中止命令違反のペナルティはかなり重いため、反社会的勢力への対応策としては非常に有効であるとのことでした。(命令は数万件出されているが、命令違反をしたケースは数件とのこと)。

警察に相談をしている間も、相手方からの連絡が止まなかったため、指導に従い、中止命令を出してもらうことにいたしました。

今後は、弊所が代理人として介入し、これ以上の金銭の要求を拒否するとともに、支払ってしまった金銭の取り戻しを図る予定であります。

ポイント
★暴力団の関与が疑われる事件では、相手方が暴力団であると確定できない段階でも、まずは警察に相談すべき
★その際は、相手方が名乗っている名前や組織名、刺青の有無、相手方が話していた暴力団であることを匂わせるような発言など把握している限りの情報を整理して持参する
★証拠が少なく、刑事事件としての立件が難しい場合でも、把握暴対法の中止命令を用いて関係の遮断が可能
★同時に、所轄の警察からの把握保護を受けることも可能
★中止命令違反のペナルティは重く、把握暴力団等からの接触への対応策としては非常に有効である!

最後に

暴力団のトラブルでは、相手の威圧が怖くどこにも相談できないまま、長期にわたりお金をむしり取られ続けてしまうこともあります。また、警察への相談も「警察に相手にされないのではないか?」「相談したことが相手方に伝わったらどうしよう」となかなか相談に行けないという方もいらっしゃるかと思います。
弊所では暴力団を相手方とした事案をはじめ、多数の不当要求対応のご相談をお受けしております。現在被害に遭われていてお困りの方は、その対応について弊所までご相談いただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。