【保存版】不当要求への対応術を弁護士が解説!!

不当要求という言葉を聞いたことはありますか。

聞いたことのある方はそこまで多くないかもしれませんね。

弊所ではまだあまり馴染みのないこの「不当要求」の対応に特に力を入れております。

我々はこの「不当要求」を受けて、財産を奪われたり、職を失ったり、家族がバラバラになってしまったりと、取り返しのつかない状況に追い込まれた方々を多く見てまいりました。
ご相談をお受けして感じるのは、早い段階で適切な対応をしていれば、そのような結果を回避できたものがほとんどであるということです。
適切な対応方法を知っているか否かで結果が分かれてしまうわけです。

そのような現実を目の当たりにして、弊所で培ったノウハウを少しでも社会に還元して被害予防を図りつつ、被害に遭われた時には、すぐに適切な対応方法の一つとして弁護士にご相談いただくことを思い出して欲しく、日々、情報の提供をさせていただいております。

さて、本日は、不当要求を受けた際の対応術を解説したいと思います。

定義

 そもそも「不当要求」とはどんな行為を指すのでしょうか。

明確な定義がある訳ではないので、弊所で今まで受けてきたご相談やご依頼から「不当要求」とは何かを考えてみたいと思います。

過去に弊所でお受けしてきた案件を整理すると下記のようになります。
「法的根拠のない請求」または「法的根拠はあるが、不相当に過大な請求」「不当要求」における「要求」の部分に該当することが分かりました。
要するに「裁判所に持って行った時に到底認められない請求」ということですね。

  • 「法的根拠のない請求」
  • 「法的根拠はあるが、不相当に過大な請求」
  • 「裁判所に持って行った時に到底認められない請求」

次に「不当要求」「不当」の部分ですが、暴行や脅迫を用いる犯罪に該当するレベルのものから、不安や不快感を利用した揺さぶり行為まで、様々な行為がありました。

以上から「不当要求」をやや強引に定義するならば

暴行や脅迫のほか、相手方に不安や不快感を与えるあらゆる手段を用いて、法的に根拠のない請求や不相当に過大な請求を通そうとする行為
と言えるでしょうか。

具体例

 かなり強引な定義をしましたが、抽象的過ぎてピンとこないところがあると思います。
具体例があれば、おそらく皆さんも理解しやすいでしょう。
以下のような行為が、弊所で取り扱っている「不当要求」の具体例になります。

脅迫

・元カレから付き合ってた頃の写真等を拡散すると脅された
・生命に関する脅迫
「お前を殺すぞ」、「お前の親や家族を殺すぞ」脅された
・身体に関する脅迫
「ぶっ飛ばすぞ」、「今まで感じたことのない痛い目を見させるぞ」、「ボコボコにしてやる」、「子供をさらってやる」脅された
・自由に関する脅迫
「今日は帰さないぞ」、「お前が要求を飲むまで帰らないぞ」脅された
・名誉に関する脅迫
「インターネットで写真や個人情報をばらまくぞ」、「お前の住所を公表するぞ」脅された
・財産に関する脅迫
「お前の財産を全部奪ってやる」、「家を燃やすぞ」脅された

恐喝

・出会い系で会った女性の彼氏を名乗る男性からお金を払えと脅された
・害悪を告知して脅迫+財物を交付させた
「お前を殺すぞ」と言われ,お金を取られた
・害悪を告知して脅迫+財産上不法の利益を得た
「ぶっ飛ばしてボコボコにしてやる」と言われお金を取られた

強要

・不倫相手と関係を精算しようとしたところ奥さんと別れろと脅された
・義務のないことを行わせられた
「奥さんと別れろ」と言われ,宿泊や外泊を強要された
・権利の行使を妨害された
「奥さんが慰謝料請求してきたら行為時の写真を送りつける」脅された

男女トラブル

・会社の同僚と不倫していたところ、相手の奥さんから3000万円の慰謝料を請求された
・別れ話がこじれ,相手方が自宅や職場に電話をかけてきて、自宅や職場の前で待ち伏せされた
・元カレと交際していた時に撮影された自分の裸の写真を送られて金を請求された
・交際中の彼女が妊娠して「堕ろしてほしければお金を払って」脅された

悪質クレーム

・営業時間外に謝罪対応しろと要求された
・毎日クレームの電話をかけてこられる
「お前では話にならないので上の者を出せ」「社長を出せ」脅された
・慰謝料の支払をお断りしたところ「誠意を見せろ」「何が誠意かはお前が考えろ」脅された

具体的な対応術

 「不当要求」の具体的なイメージを持っていただけたでしょうか。

脅迫や恐喝というと、遠い世界の出来事にお感じになられる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、昔はヤクザなどの反社会的勢力による行為と考えておけば足りるところはありました。
しかし、現代では、程度の軽いものも含めるとかなり皆さんの身近な問題にも「不当要求」が絡んできていることが分かります。
必ずしも反社会的勢力による行為とイコールではありません。
皆さんも気がついたら被害者になっている、ということもあり得るわけです。

それでは、このような不当要求に対して、どのように戦っていけば良いのでしょうか。
以下、具体的に解説いたします。

心構え

 まずは、落ち着きましょう。

一番大事なことは、焦らずに状況を冷静に把握することです。
不当要求の相手方はとにかく、不安を煽り、焦らせてこちらのペースを乱そうとしてきます。
冷静な判断ができない状況を作ろうとしているのです。

その典型的なやり方が「期限を区切る」というやり方です。
多くの場合には、実現が困難な期限を設定してきます。

また「期限を区切る」と同時に「小さいが実現の難しい要求」を突き付けてくることもよくあります。
例えば「今すぐ謝罪しに来い」「明日までに奥さんに事実を全部話せ」など、期限を区切りながら、小さい要求を突き付けてきます。

相手方はこの要求を通したい訳ではないことがほとんどです。

無理な要求を突き付けて、こちらが応じられないと「誠意がない」「なぜお前が進め方を決めるんだ」などとさらに追い詰めて、コントロールを強めようとします。

多くの方は、このような相手方からの小さい要求に晒されていくうちに、冷静な判断ができなくなっていきます。
何を言っても事態は前に進まず、相手方の要求を呑むしかないないのではないかという錯覚に陥っていくのです。

この段階において、落ち着きを取り戻すために重要なことは「一人で抱えないこと」です。
自分以外の客観的な意見を聞くだけで、かなり冷静さを取り戻すことが可能です。
家族に相談ができなければ、職場の同僚や友人でも構いません。
ネットの悩み相談や法律相談を利用してもいいでしょう。

もちろん、弊所のような法律事務所に相談することも選択肢の一つです。

弊所は無料で法律相談をお受けしているせいか、かなり多くの問い合わせをいただきますが、皆さまからは「法律問題ではないのではないか」とか「こんなことを相談したら怒られるのではないか」という話をいただくことがあります。
実は「法律問題でないことを確認すること」が大事なのです。
既に触れたとおり、不当要求の中には「法的に根拠のない請求」もあります。その時点で、基本的には相手にする必要はありません。
また、いかなる相談にあたっても「怒る」ようなことはいたしません。弁護士は皆さまの味方です。
皆さまが誰にも言えずに苦しんでいる問題を共有し、その解決方法を模索する立場にあります。
どうか遠慮だけはなさらないでください。

繰り返しになりますが、誰でも構わないので相談をして、一人で抱えないようにしてください。

相手方の情報を可能な限り収集する

不当要求に対応していくうえで、相手方がどこの誰であるか全く分からなければ、基本的には対応のしようがありません。

相手方の名前、電話番号、住所、メールアドレスなど、出来る限り相手方の情報を得るようにしましょう。
相手方の情報は大いに越したことはありません
注意
最悪でも電話番号が分かれば、契約者情報を調査し、住民票などの公的記録によって裏付けをとることで、相手方がどこの誰であるか特定できる場合があります。
なお、最近では、LINEでしか話したことがないというケースも多くありますが、LINEのIDしか分からないとなると、相手方の特定は困難になるので注意が必要です。
相手方は、出来る限り安全圏から揺さぶりをかけようとしてきます。
自分がどこの誰であるか知られていないからこそ、大胆に揺さぶり行為をかけてくるわけです。
そのため、身元の特定に結び付く情報を簡単には出してこないかもしれませんが、相手方に話を合わせるかのような体で隙を作り、出来る限り情報の収集をしましょう。
中には一切相手方についての情報が手に入らないケースもあります。
出会い系サイトで起こる美人局などの場合ですね。
注意
関係を持った本人の情報はサイトのIDくらいしかない、脅しをかけてきた人物もホテルの外で会っただけで、どこの誰であるか分からないというケースもございます。
一切のヒントもなく、連絡の取りようがないのであれば諦めざるを得ない場合もありますが、やり方によっては特定に結び付く情報が得られる可能性もあります。
例えば、相手方をうまく呼び出して、その場で個人情報を押さえる、相手方の帰住先を尾行して確認するといったやり方です。
必ずしもうまくいくとは限りませんし、リスクもありますので、こういった方法を取る場合には、弁護士や調査会社の人間にご相談ください

相手に喋らせる、回答はしない

不当要求の対応においては、基本的には相手方に喋らせることが重要です。

既に触れた相手方の身元を特定する情報が出てくる場合もありますし、後に触れる「証拠の保全」につながる部分もあります。
特に脅迫や恐喝のケースでは、どんな言葉で脅しをかけてきたのかが、後に弁護士や警察で対応する際の重要なポイントになる場合があります。

ADVICE
今のご時世、対話や通話の録音も容易ですから、基本的には相手方も警戒してストレートな脅迫は避けるでしょう。
ですが、要求を通そうと思えば、ギリギリの揺さぶり行為をかけなければなりません。

このギリギリの揺さぶり行為をかけているうちにボロを出すことがあるのです。
相手方にはどんどん喋らせましょう。喋らせてこちらに不利になることはありません。

ただ、相手方に喋らせる際には相手方の質問や要望には基本的にその場で回答しないように注意しましょう。
相手方は、小さな綻びを見つけて執拗にそこを攻めてきます。

誘導するような質問を繰り返して言質をとることはよくやりますね。

「あの時、ああ言った、こう言った」とがんじがらめにして、こちらの反論を封殺しようとするのです。

そのため、できるかぎりその場での回答は避け、聞くだけに回りましょう。

何を言われても「まずはお話を伺う、回答は必要に応じて追ってする」とだけ伝えましょう。

お金は渡さない

 突然、激しい揺さぶりをかけられたら、不安や恐怖から解放されたい一心で、お金を払ってしまいたいという気持ちになるかもしれません。
ですが、基本的にお金を渡してはいけません。

ADVICE
まず、一度渡したら、後で回収するのは非常に困難になります。
隠されたり、使われてしまったりすれば、少なくとも回収に時間がかかることは間違いありません。

次に、お金を払えば解放されるかと言えば、そうとは限りません。
一度味をしめた相手方は、次から次へと要求を突き付けてくる可能性があります。
その都度、これで最後と言われお金を渡し続けて、数千万単位の被害を受けたケースもございます。
後に取り戻そうとしても、既に費消されていれば、回収は事実上断念せざるを得ない場合もあります

もし、こちらに何らかの落ち度がある場合には(例えば、不貞行為をしてしまい、不貞相手の配偶者から慰謝料の請求を受けているが、相手方の請求態様が恐喝にも該当するような激しいものである場合)、お金を払うことで解決に結び付くこともありますが、この場合にはご自身で言われるがままに支払うのではなく、弁護士などを代理人にしたうえで、適正な金額を払うにとどめ、さらに後腐れのないように合意書の取り交わしをするようにしましょう。

証拠を収集する

 弁護士に相談するにしても、警察に相談するにしても、恐喝や脅迫を受けているという点について証拠が必要になります。
メールやLINEで直接的な脅迫を行うケースはさすがに少なくなってきましたが、事件の背景を把握するうえで役立ったり、他の証拠と合わせてみると、脅迫の証拠として用いることができたりと、使い道は様々です。

ADVICE
相手方のLINEやメールとなると、消したくなる気持ちも分かりますが、きちんと保存をしておきましょう
また、動画や音声なども保存できれば役に立ちます。
対面でのやり取り(相手方に承諾を取る必要はありません)や電話の会話を録音しましょう。
その際には、会話の相手方がどこの誰なのか(会話の中で名前を呼ぶなど)といった点や、何らかの請求をしてきているのであればその経緯を会話の中で触れ、相手方の行為を会話の中で確認するようにすると良いでしょう。
もちろん、あまりにやり過ぎると不自然な会話になってしまうので注意は必要です。
過去に証拠が全くないというケースもありましたが、ご本人が電話で会話をする横で当職が指示を出し、証拠を作るという作業をしたこともあります。
証拠がない=諦めるということではありませんので、まずはお気軽にご相談いただきたく思います。

可能な限り早く相手方との接点を無くす

 恐喝や脅迫のケースでは、既に触れたとおり、皆さんを孤立させたうえで判断能力を奪い、コントロールをしてお金を払わせたり、自らの要求を通そうとしてきます
こういったコントロールは相手方と接点を持つ限り続きます。
そのため、可能な限り早いタイミングで相手方との接点を無くすことが重要です。

ADVICE
弊所では、恐喝や脅迫のご相談をお受けした際には、原則即日に介入する旨説明しております。
当職にご相談いただいた後に、相手方から攻撃を受け、お金を渡してしまったというケースがございました。
弊所ではこの経験から、恐喝や脅迫被害を受けている事案では特に「即時対応」が重要であると強く意識しております。
代理人に任せてしまえば、基本的に揺さぶりを受けることはなくなりますし、相手方も大胆な手に出にくくなります。
まずは安全圏に逃げてもらい、じっくり相手方の属性や出方を見極めながら対応すれば、恐喝や脅迫などの不当要求に負けることはありません。

警察には一応被害相談をしておく

刑事事件として扱ってもらうかどうかは別として、早い段階で警察に相談しておくことは重要です。
その際には、基本的には最寄りの警察署に相談に行きましょう。
限られた人員で対応しておりますので、いきなり警察署に行っても、担当者が不在なんてことも珍しくありません。

ADVICE
できれば事前に電話して被害の概要を伝え、該当部署の署員にアポイントを取っておくべきです。
被害相談の際には、時系列で事実関係を整理し、書面やメール、LINE、音声や映像などの証拠があれば持参するようにしましょう。
ただ、その場で全てを確認するというのは時間の都合上難しい場合もありますので、証拠の概要や重要なポイントを整理したメモなどを渡すと良いかと思います
(例:●月●日●時頃、相手方より受けた脅迫の電話の録音。●分●秒~●分●秒に「俺のバックにはヤクザがいる」との発言あり)

警察に相談することにより、皆さんの身元情報及び相談内容が登録されます。
そのため、緊急事態に110番通報すれば、皆さんのトラブルを踏まえた迅速な対応を受けることができます。

また、ストーカーの事案や男女トラブルでなどであれば、その場で警察が相手方に事実上の警告を電話で入れてくれる場合があります。
この警察からの連絡で事件が収束することもあるところです。

(結び)

 以上が不当要求対応の「基礎」になります。
特別に難しいことはないですね。
皆さんでも問題なく対応できる内容かと思います。

ただ、不当要求の事案においては、冷静さを保つのが難しいところです。
知識として対応方法を把握していたとしても、いざという時に思うとおりに動くことができるかと言えば、簡単ではないかもしれません。
そんな時は、無理して抱え込まず弁護士にご相談ください。

繰り返しになりますが、早い段階で適切な対応をしていれば、被害を回避ないし軽減することが可能な場合がほとんどです。
一度屈してしまえば、二の矢三の矢が飛んできて、被害は拡大していくおそれがあります。
少しでもご不安を感じた時に弊所を思い出していただければ幸いです。