悪質なモンスタークレーマーの対応について弁護士が解説

事業を営む方にとって、クレーム対応は特に頭を悩ませる問題です。
クレームにならないように丁寧に対応していても、理不尽な話をする方はいるもので、隙を突き金銭を得ようとクレームをつけてくるケースもあります。
この記事では、特に【モンスタークレーマー】と言われる悪質なクレーマーについて、どのように対応したらいいか弁護士の目線から解説いたします。

モンスタークレーマーとは?

モンスタークレーマーとは、クレーマーの中でも特に悪質なクレーマーを指し、謝罪の要求から始まり、詐欺や脅迫まがいの手を使い金品の請求までおこなってくるクレーマーを言います。

クレーマを表現した画像

クレーマーの種類

クレーマーにもいくつか段階があり以下のように分類されています。

ホワイトゾーン

ホワイトゾーンとは、こちら側に非があるなど、要求に正当さが認められるクレーマーを指します。
言い方は厳しく、対応については気を付けなければなりませんが、業務の改善にもつながるお客様の声として誠心誠意対応する必要があります。

ブラックゾーン

ホワイトゾーンの対極で、モンスタークレーマーと呼ばれています。
こちら側に非がなかったとしても、言葉尻を捕らえたり、自らクレームとなる原因をつくったり等、理由を無理やり作ってでも謝罪の要求や金銭の請求などをしてきます。

ホワイトゾーンでは、原因がありそこからクレームが発生することになりますが、ブラックゾーンはそもそもクレームをつけること自体が目的なので、クレームをつけるための理由探しをしてきます。

グレーゾーン

上記2パターンの中間に位置するクレーマーです。昨今この層が増加していると言われております。
ホワイトゾーンのクレーマーがエスカレートする場合や、ブラックゾーンの初期の段階など分類が難しく、その対応についても細心の注意を払う必要があります。


クレームを受けた時の初期対応

クレームを受けた時点では、まだ相手方がどのゾーンのクレーマーなのかはわかりません。
どのような場合でもまずは、相手方をホワイトゾーンのクレーマーと仮定して、丁寧なクレーム対応をすることを心がけてください。

初期対応のやり方と注意点

ホワイトゾーンのクレーマーに対して、どのように対応するかその流れと、注意点についてご説明します。

対応の流れ
1, まずは相手の言い分に傾聴する

→頭に血が上っている最初の段階では、こちらから口を挟むのをひかえ、相手の怒りが落ち着くまで、反省した態度で相手の言い分に傾聴してください。

2, 質問と要約を繰り返す

→たいていの場合、相手はまくしたてるように話すので、相手が落ち着いてきた状況を見計らって、今まで相手が話した内容を要約し、不明な点については、質問をして確認をおこなったうえで、しっかりと相手の主張を理解するようにしてください。

3, 問題点について事実の確認を行う

→相手の言い分を理解したら、事実の確認を行いましょう。クレームの原因が相手の勘違いの場合もありますのでしっかりとした状況の確認が大切です。

4, こちらに非がある場合にはその部分についての謝罪する

→いわれのないことについての謝罪までしてしまうと相手が増長してしまうので注意してください。

5, 改善策について提案をする

→今後どのように改善していくのかを提案することで、こちら側の真剣味を伝えることができます。

6, 業務の改善につながったことへ感謝を行う

→あなた(クレーマー)のおかげで、今後の対応や顧客の満足度をあげることができたと、相手に感謝することで、クレーマーも満足感を得ることができ、これ以上クレームを続けることがなくなる場合がございます。

対応の注意点
1, 不適切な言動に気を付ける

→「担当じゃないのでわかりません」等責任を転嫁するような発言や、投げやりな回答をしてしまうと相手の怒りがヒートアップし、問題がこじれてしまう場合があるので気を付けてください。

2, 相手の話をさえぎらない

→相言いたいことを言いえないと、相手の留飲が下がらずいつまでもクレームが止まりません。辛抱して、相手の発言の区切りがつくまでこちらの主張をするのを控えてください。

3, 安請け合いしない

→相手の怒声に負けて、つい「保証させていただきます」等の発言をしてしまうことがありますが、絶対避けましょう。こちらに非がなくてもこの発言だけをもって、相手の請求が止まらなくなる可能性があります。

また、この一次対応については、書籍や、企業向けのセミナー、研修なども開催されておりますので、こういったものの活用も含めて万全の対策を講じるよう心がけてください。
特に一次対応をしなければならない、従業員の方への教育を徹底することは重要です。


それでも請求を続けるモンスタークレーマーへの対応

上記のように丁寧に対応していても、相手方が納得しないまま、毎日電話がかかってくる、実際に店舗まで来てしまう、金銭の請求をされる等、クレーム被害が止まらない場合についてはどのように対応するのがいいのでしょうか。

初期対応に区切りをつけて次の段階へ

基本的な上述した通りの対応を続けても埒が明かない場合には、ホワイトゾーンのクレームとは分けて次の段階へと進まなければなりません。こちらに非がない場合については、相手の謝罪や金銭的要求を呑む必要もございません。お客様であった時とは区切りをつけて毅然とした対応を心がけてください。

警察への相談

警察対応の説明についての画像

モンスタークレーマーに対応する際には、まず録音等の証拠を残すようにしてください。相手の言葉の中に脅迫にあたる言葉がある場合や、1日に複数回の連絡が何日にもわたる場合には刑事事件として、警察が動いてくれる場合がございます。
証拠を基に警察へ相談し、警察と連携をしながら相手との対応を考えてください。

・脅迫罪
相手の言葉の中に「店を潰してやる」「殺してやる」「世間にこの店の悪評を公表してやる」など、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合には脅迫罪に該当する場合があります。

脅迫罪(刑法222条)
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

・業務妨害罪
相手が日に複数回、何日にもわたりに電話などでクレームつけてくる場合には威力業務妨害罪に該当する場合がございます。また、SNS、張り紙など偽計(デマ)などを広め業務を妨害した場合には偽計業務妨害罪に該当する場合がございます。

信用毀損及び業務妨害(刑法233条)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
威力業務妨害(刑法234条)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

弁護士に依頼する場合

弁護士対応についての説明の画像

警察が動いてくれない場合に、自社のみで対応することはあまりお勧めできません。その場合には弁護士に依頼することをご検討ください。自社のみでの対応では、対応にあたる人にはかなりの精神的ストレスがかかりますし、金銭の請求に法的根拠があるかどうかの判断も難しいと思います。
また、弁護士、警察が入ることで今まで散々続いてきたクレームがピタリと止まったなどの事例もございます。
弊所で取り扱いのある脅迫などでもそうですが、モンスタークレーマーなどの加害者は「取れる」と思う相手に対して強く要求してくるのであり、弁護士が間に入ってしまえば「取れる」相手でなくなるばかりか、刑事事件化されたり、逆に業務妨害についての損賠賠償を請求されたり等、相手にとって不利なことも生じるため、脅迫を続ける動機がなくなる場合がございます。

クレームの対応に悩む事業者へ、管理者様へ

クレームの対応では特に初期対応が重要となります。まずはクレームに対応することになる従業員のために、研修を実施したり、クレーム対応のマニュアル化を進めるなど徹底して、こじれることの無いように事前準備を入念に行ってください。
それでも、一定数、対応ができないほどのモンスタークレーマーは出てきてしまいます。その際にはこの記事でお伝えしたような対応と、現状を踏まえたうえで弁護士へのご相談をご検討ください。また、クレームが複数件あるような場合には顧問弁護士をつけて、まとめて対応を依頼することもご検討いただくとよいかと思います。

最後に

本記事を最後までご覧いただきありがとうございます。弊所、若井綜合法律事務所では、反社からの脅迫など、様々なクレーム、不当要求への対応実績がございます。お困りの方がいらっしゃいましたら、初回は無料相談となりますのでお気軽にご相談ください。

【事例紹介】身元を特定できない相手から脅迫を受けたら